【社労士・松井先生に聞く】いまさら聞けない「骨太の方針」とは?経済対策から読み解く労基法改正の行方と人事労務の備え
2026年7月21日、高市内閣初となる「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)」と「日本成長戦略」が同時に閣議決定されました。岸田内閣時代の「新しい資本主義」から一線を画し、「強い経済」の実現に向けた成長戦略が示されています。
2026年8月にリリースした「TeamSpirit AIシフトエージェント 」は、シフト作成における現場のリアルな課題の解決のみならず、AIを活用した効率化とコンプライアンス遵守の両立、さらにはその先にある「人的資本経営」や「現場マネジメントの形式知化」までを見据えた製品です。
プロダクト責任者であるTeam Success Platform統括事業本部 AI事業推進室 室長の渡邊友仁さんと、チームスピリットでおなじみのiU組織研究機構 代表理事であり社会保険労務士の松井勇策先生をお迎えし、編集部が詳しくお話を伺いました。
時代に応じた先進的な雇用環境整備について、雇用関係の制度や実務知識、特に国内法や制度への知見を基本として、人的資本経営の推進・AIやICT関係の知見を融合した対応を最も得意とする。
人的資本経営の導入コンサルティング・先進的なAIやDX対応の雇用環境整備コンサルティング・国内の上場やM&Aに対応した人事労務デューデリジェンスなどに多くの実績がある。
著書『現代の人事の最新課題』『人的資本経営と開示実務の教科書』シリーズほか。人的資本経営検定 監修・試験委員長。
IT業界で20年以上のビジネス経験を持ち、富士通やLINEでIoTやAI-SaaSの事業開発にも携わった後、2025年2月にTeamSpiritへ入社。現在はAI事業推進室長として、AIビジネス戦略策定とプロダクト開発をリードし、人事労務領域の新しい価値創造に挑戦中。
編集部:
渡邊さん、松井先生、本日はよろしくお願いします。まずは渡邊さんに伺いたいのですが、「TeamSpirit AIシフトエージェント」とは、どのような背景から生まれた製品なのでしょうか?
渡邊:
一般的に、シフト管理業務は配置計画、希望の収集、シフト表の作成、ドラフトの調整や確認、配布、そして急な欠勤への突発対応といった段階に分かれます。私たちが今回の製品で課題解決を図りたかったのは、シフト管理業務の中で最も時間がかかっている「シフト表の作成と組み合わせ調整」の部分です。
デスクリサーチや過去の商談分析を行った結果、スタッフ同士の相性なども関わる「組み合わせ調整」に一番の手間がかかっていることが分かりました。1つの店舗や拠点で、月20〜30時間ほどシフト作成に費やしているケースも珍しくありません。少なく見積もっても、時給換算で数万〜10万円近くのコスト(管理者の人件費単価想定で換算)が、シフト作成だけで毎月発生している計算になります。
本来、店舗責任者や管理者は、拠点の効率化やメンバーへのマネジメント、育成に時間を使うべきです。そこに対して私たちが人事労務領域で培ってきた知見とAIを掛け合わせ、解決したいと考えたのが開発の背景です。
加えて、当社の勤怠サービスとの連携は、お客さま側で改めて作り込んでいただく必要がありません。シフト機能だけを単独でご利用いただくことももちろん可能です。
編集部:
毎月数十時間ものシフト作成業務が効率化されれば、 本来マネジメント側が取り組むべき育成などに時間を取ることができますね。機能面での主な特長を教えていただけますか?
渡邊:
大きな特徴は3つあります。
1つ目は、会社や店舗ごとの独自ルールを「自然言語」でAIに指示・設定できる点です。「毎週水曜は定休日だけど、今月〇日はイベントで人が必要だから開けて」といった条件も、人が話すような言葉でセットできます。
2つ目は、AIが提示するのはあくまで「シフトのドラフト(たたき台)」であり、最終的な判断は「人」が行うという業務の棲み分けをしている点です。
3つ目は、労働基準法などの会社として遵守しなければならない法令ルールを設定している点です。法改正の際も、個別のカスタマイズに悩まされることがありません。 違反リスクがあればエラーメッセージや警告でお知らせすることができます。
編集部:
松井先生に伺います。専門家・社労士の視点から見て、今回の「TeamSpirit AIシフトエージェント」のコンセプトや機能性をどのように評価されていますか?
松井先生:
一言で申し上げると、これからの働き方の進化において、一番重要なポイントを先取りしている製品だと感じています。単なるコンセプトにとどまらず、現場が抱える実務的な課題を解消し、対応コストを劇的に下げるという明確なメリットがあります。
俯瞰的な視点でお話しすると、世界的にHR(人事労務)領域でAIを活用する際、「人間の管理や評価をすべてAIに委ねて自動化してしまうことの不健全さ」が議論されています。人間が適切に介在する「Human-in-the-loop※」の観点が強く求められている中で、本製品のように「AIが提案し、最終判断は人が行う」という設計は、世の中に提示するAIの形として非常に健全であり、機能的な優位性を持っています。
※Human-in-the-loop:AIの処理の流れに人間が関与する仕組みのこと。機械学習モデルの訓練や改善の段階で人間が関わることを指す場合と、実際の業務においてAIの出力を人間が確認・修正し、最終的な判断は人間が行うことを指す場合がある。本記事で述べているのは後者にあたる。海外のAI規制でも、人事・労務の分野でAIを使う場合には、人間による監督を確保することが特に重視されている。
編集部:
「AIが提案し、人が決める」という形が、コンプライアンスや倫理の面でも理にかなっているのですね。現場の実務や労務管理の観点では、具体的にどのような変化が期待できるのでしょうか?
松井先生:
最も大きいのは、「事後確認から事前設計へ」の転換です。現状検討されているものも含めると、労働時間に関する規制や、連続勤務の制限、勤務間インターバルなど、働き方のルールは年々厳格化していくことが見えており、近い将来の労働基準法の改正でも重要な論点となると予測されます。さらに重要なのは、こうしたルールが「事後的に負荷を管理し改善する」という思想ではなく「多様な働き方を設計する」考え方でないと対応が難しくなっていることです。
手作業のExcel等でこれらを管理するのは労務リスク(法令違反、過重労働など)が高く、設計が不完全になりやすい状態です。AIを活用して法令に沿ったシフトを「事前に」無理なく設計できれば、現場の対応工数をかけずにリスクを未然に防ぐことができます。
さらに、労使コミュニケーションを深いレベルで行えるようになる点も重要です。従業員の希望や制約をシステム上で調整するプロセス自体が、エビデンスに基づいた対話の場となり、現業職の働き方を高度化・高機能化していくことにつながります。
渡邊:
松井先生がおっしゃる通り、本製品は効率化を実現するツールであると同時に、本質的にはこれからの働き方を設計するための「データ基盤」でもあります。
例えば、これまでオフィスワーカーの働き方はある程度可視化されてきましたが、拠点を多く持つ企業の場合、現場で誰がどのような働き方をしているのかは各店舗の店長に委ねられていました。シフト表の作成を通じて、これまで現場の「暗黙知」となっていたナレッジを形式知化し、企業としての経営戦略や人的資本経営に活かしていくことが、私たちの目指すデータ基盤のあり方です。
松井先生:
この「データ化」の意義は計り知れないですね。
現場で働けない時間帯が多い理由が、実は育児や介護であったり、他社とのダブルワークであったり、あるいは通学していて時間制限があるなど、個別事情が極めて強い理由であることは珍しくありません。こういった状況について、「店長だけが個人の事情を把握していて暗黙知化している」ような状況である企業や店舗が多いと思います。
しかしながら法令や政策でも「多様で自律的な働き方」が進められており、個別事情へ適切に支援策を講じることが採用競争力やエンゲージメント向上の決定打になるのが現在の労働市場であると言えます。こうした情報を現場責任者(店長)の暗黙知にしておくことは管理の負荷もかかりますし、何よりも非常に勿体ない状況だと言えるのです。
「TeamSpirit AIシフトエージェント」によって生活情報や属性情報がデータ化されれば、本部は「育児中のスタッフが多いから、全社的な支援施策に注力しよう」といった付加価値の高いサポートを展開できるようになり、多様な活躍支援がより具体的に進められるようになります。
渡邊:
一方で、こうした情報は取り扱いに配慮が必要な領域でもあります。私たちは、本人の同意と利用目的の限定を前提とし、あくまで働く方ご自身の支援に使われる設計であることを重視しています。その上で申し上げると、特に飲食・小売・製造などの現場では、「定着率」が大きな経営課題になっていますよね。
採用競争力が問われる中、どのような育成やコミュニケーションを行えば定着率が上がり、利益が向上するのか。これまでは店長個人の勘や経験に頼っていた部分を、ある程度仕組み化していくことが重要です。売上の良い店舗のナレッジを形式知化し、蓄積していく機能の拡張も視野に入れているので、コミュニケーションを円滑にすることで定着率を引き上げ、企業の体力につなげていきたいと考えています。
松井先生:
おっしゃる通り、個人のナレッジや生活情報が自動的に形式化され、運用しやすくなる仕組みは、今後の社会で本当に求められる要素ですね。多様な働き方を支援するだけでなく、非正規雇用の同一労働同一賃金や機会確保といった平等・公正を担保する上でも、このシステムは経営資産として非常に高い価値を生み出すはずだと思います。
編集部:
効率化にとどまらず、経営資産としての価値まで見据えられているとのことですが、今後はどのような機能拡張や連携を予定されているのでしょうか?
渡邊:
今回のリリースでは、「TeamSpirit 勤怠」の従業員マスタやシフトパターンなどとの標準連携をしています。今後は、大きく次の方向性で機能拡張を考えています。
1つ目は、「人員配置計画」からさらに上流の「要員計画」への拡張です。シフトを組むだけでなく、経営判断に使えるレベルまで引き上げたいと思っています。例えば、時給を設定することで、その日のシフトでどれくらいのコストがかかっているかが可視化され、売上や利益への影響を見ることができます。人件費を含めた原価管理ですね。実績のあるパートの方に対して「正社員になりませんか」というキャリアアップのプランの提示を経営指標として行うことができるようになります。
2つ目は、 「MCP(Model Context Protocol)対応」です。MCPは、生成AIと業務システムをつなぐ標準規格として広がりつつあります。これに対応することで、AIシフトエージェントが保持するシフトや人件費のデータを、お客さまの社内AI環境から安全に活用いただけるようになります。例えば、社内のAIアシスタントに「来月、人件費が予算を超えそうな店舗はどこですか?」と問いかければ、シフトデータに基づいた答えが帰ってくる。そうした形で、シフトを「作る」だけのツールから、経営課題に伴走するインターフェースへと広げていきたいと思っています。
松井先生:
「年収の壁」や社会保険の要件変更など、現場でのポラリティ(相反する二つの要請の両立)のマネジメントは非常に難易度が高いのが現状です。育成的に伸びていく方には頑張った分だけレバレッジが効くような道筋を用意し、一方で個別の事情を抱える方の状態もしっかり把握する。現場のマネジメントが複雑化しすぎている中で、システムが情報基盤としてサポートし、合理的に現場を支援できる点は素晴らしい展望だと感じます。TeamSpiritの強みである多面的なデータ連携基盤があるからこそ描ける世界観ですね。
編集部:
「TeamSpirit AIシフトエージェント」が単なる業務効率化だけではなく、経営課題の解決を見据えた思想で開発されていることがよくわかりました。今後の機能拡張も楽しみです。
最後に、松井先生から「TeamSpirit AIシフトエージェント」 への期待をお伺いできますか?
松井先生:
今後、社会や法令はより多様で自律的な働き方を推進する方向に向かいます。それに伴い、労働時間の規制対応や、実質的な労使コミュニケーションの深化、現場労働の高機能化と賃上げなど、会社に求められる責務は大きくなっています。
「TeamSpirit AIシフトエージェント」を導入すれば、困難な法令対応がスムーズに終わり、現場の実態がガラス張りになります。これまで何十人に一人しかいなかったような「スーパー店長」が行っていたレベルの現場マネジメントを、誰もが自然とできるようになる。これこそまさに、国が目指している「現場能力をAIで向上させる」という雇用政策の重要な目的の実現に役立つツールだと思います。この価値を、これからも着実に磨き上げていっていただきたいと期待しています。
渡邊:
ありがとうございます。採用しても人が来ない、賃金を上げようにも人が採れないという時代において、「今働いている人たちにいかに長く働いてもらうか」は企業の生命線です。多様な働き方を支え、現場の課題を解決するだけでなく、経営の意思決定にAIで伴走できるサービスとして、チームスピリットはこれからも進化を続けていきます。
編集部:
松井先生、渡邊さん、本日はありがとうございました!
TeamSpiritのAIシフトエージェントは、従業員の希望や勤務条件、複雑なシフトルールをもとにシフト案を自動作成し、管理者の作成負担を軽減しながら、効率的で精度の高いシフト管理を実現します。
2026年7月21日、高市内閣初となる「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)」と「日本成長戦略」が同時に閣議決定されました。岸田内閣時代の「新しい資本主義」から一線を画し、「強い経済」の実現に向けた成長戦略が示されています。
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