労基法大改正で変わる“働き方の未来”──社労士 松井勇策先生が語る、人的資本経営の本質とTeamSpiritの役割
2027年に予定されている労働基準法の大改正は、企業の働き方や制度設計に大きな影響を与える重要な転換点です。今回の改正は、単なる法令対応にとどまらず、人的資本経営や多様な働き方の推進といった、企業の成長戦略にも深く関わる内容となっています。
2027年に予定されている労働基準法の抜本的改正は、単なる法令遵守の義務を超え、企業の人的資本経営とつながる戦略人事への転換を決定づける大きな契機となります。
チームスピリットでは労基法改正のポイントを学ぶだけではなく、「未来の組織づくり」を考えるグループディスカッションを盛り込んだワークショップを開催しました!
今回のワークショップはIT/情報通信業やメーカーなど、さまざまな業界から人事・労務、情報システムや経営幹部の方など、14社17名のチームスピリットユーザーの皆さんが参加されました。
その様子をお届けいたします!
講師は、産学連携シンクタンク iU組織研究機構 代表理事・社労士である松井勇策先生です。
産学連携シンクタンク iU組織研究機構 代表理事・社労士。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授(人的資本経営・雇用政策)。社労士・公認心理師・AIジェネラリスト。
時代に応じた先進的な雇用環境整備について、雇用関係の制度や実務知識、特に国内法や制度への知見を基本として、人的資本経営の推進・AIやICT関係の知見を融合した対応を最も得意とする。
人的資本経営の導入コンサルティング・先進的なAIやDX対応の雇用環境整備コンサルティング・国内の上場やM&Aに対応した人事労務デューデリジェンスなどに多くの実績がある。
著書『現代の人事の最新課題』『人的資本経営と開示実務の教科書』シリーズほか。東京都社会保険労務士会 先進人事経営検討会議 議長・責任者、人的資本経営検定 監修・試験委員長。
まず、第一部は松井先生から「労基法改正とは?そもそもの流れの変化について」ご説明いただきました。
詳しい労基法改正の流れや本質は、下記記事をご参照ください。
https://tspark.teamspirit.com/1371
松井先生は、今回の労基法改正が目指すのは、労働基準法の役割を「労働者を画一的に『守る』機能」から、「多様な働き方を『支える』機能」へと拡張することにあると強調しました。
松井先生の解説に熱心に耳を傾け、積極的にメモを取る参加者の皆さん。単なる法令の知識にとどまらず、人事戦略としての捉え方について、皆さん真剣に向き合っていることが伺えました。
続くグループディスカッションでは、チームに分かれ、「労働基準法改正に類似する育児・介護休業法改正に、どう対応した?どのような課題を感じたか?」をテーマに議論を行いました。
参加者からは、既に進んでいる多様な働き方への対応状況が共有されました。
あるメーカーの人事担当者からは、コロナ禍からの在宅勤務導入や、育児・介護に関する従業員意向調査の実施事例が紹介されました。一方、別のIT業界の担当者からは、フルフレックスやリモートワークが既に浸透しており、今回の法改正による新たな対応は特に発生しなかったという声も。
議論を通じて特に注目されたのは介護への対応です。
参加者からは、「介護は育児に比べて画一的な対応が難しく、企業ごとの個別性が高いため、制度の枠組みだけではなく、会社として独自の支援設計が求められる」といった、実務に即した具体的な課題認識が共有されました。
2027年に向けて具体的に何が変わるのか。松井先生から、労働基準関係法制研究会の報告書から見える「改正の3つの柱」について解説がありました。
① 多様な働き方の推進
これまでは工場のような「場所」単位での画一的な管理が主でしたが、これからは「戦略単位」での管理へとシフトします。 時間や場所、一社専属といった拘束を取り払い、フレックスやテレワークなど、企業戦略に応じた柔軟な働き方を設計することが求められます。
② 労働時間管理制度の見直し
従来の「時間の長さ(量)」の管理から、「働き方の質」の把握と可視化へと重点が移ります。 例えば、LIFULL様の事例のように、PCログなどの客観的データを活用して働き方の質を定量化し、社内外へ開示していく動きが加速するでしょう。
③ 労使コミュニケーションの深化
単に労働者の代表と協定を結ぶだけでなく、ITを活用した情報共有や、日常的な対話(1on1など)の記録が重視されます。 労使委員会での議論や合意内容を透明化し、エンゲージメントを高めていくための基盤づくりが必要です。
解説を受け、続くグループディスカッションでは「労基法大改正の核心を見抜くワーク」として、「労基法改正の項目の全体やカテゴリ、個別の項目はどんな風な活用ができそうか?何が起きそうか?」について意見交換を行いました。
参加者からは、さまざまな意見が出ました。
「決められた法令に対応するフェーズから変わってきていますよね。働き方の多様性の抽象度が高いからこそ、働く個人にはキャリアの自律性が求められている。それは会社側に対しても同じで、他の会社と横並びで同じことをしていたらいいわけではなくなっていると感じます。自社ならではの組織設計が問われているのだと感じます。」
「若い世代と従来世代で働き方の考え方に違いがあるので、制度変更の必要性が出てきていると思います。それ以上に、経営層やマネジメント層が仕事の進め方やあり方を根本的に変えていくことが必要だなと思いました。」
「多様な働き方に対応するには、これまで以上に人事リソースを効率的に活用しないといけないですよね。煩雑な定型業務はシステム活用をして自動化・効率化して、その分生まれた時間を社員とのコミュニケーションの時間を確保することが重要になってくると思います。」
全てのプログラム終了後には、軽食とドリンクを用意した懇親会を開催。
専門性の高いテーマであったため、参加者の皆さまはグループディスカッションで生まれた議論の熱量をそのままに、さらに踏み込んだ情報交換を行っている様子が見受けられました。
参加後のアンケートでは、「2027年の労基法改正で人事戦略に取り組もうと思いましたか?」との問いに、79%の方が「これから取り組みたい」と回答しました。
また、優先度が高い人事課題としては、「多様な働き方への制度対応」が1位となりました。
参加者の声
・社内で人事制度担当が自身しかおらず、同じ目線で壁打ちできる相手が通常いないので、同じ目線で話せる方々との対話はとても発見があり充実した時間でした。弊社のように小さい会社だと同じようなところが多いと思うので、いい機会をいただきありがとうございました。
・人事の若いスタッフの勉強にもなると思うので、参加人数を増やしていただけると嬉しい。
・松井先生が、法改正について概要~詳細を伝えてくださり、非常に勉強になった。ただ法改正の知識を得るのではなく、法改正が起こるにあたり人事としてどのような取り組みをするのか思考することができたので、いい経験ができた。
・さまざまな形で実施いただけるとありがたいな、と思います。人事や労務ってなかなか他社さんとの交流の機会って持てず、議論したり壁打ちしたりする相手っていないことが多いのではと思います。
2027年の改正は、まだ少し先の話に思えるかもしれません。しかし、政策の目的や軸はすでに定まっています。
この変化を「面倒なこと」や「リスク」と捉えるか、「自社の働き方をアップデートし、多様な人材が活躍できる組織を作るチャンス」と捉えるかで、数年後の企業競争力に大きな差がつきます。
チームスピリットは、この「40年ぶりの大改正」を、皆さんと共に「最高のチームを作る機会」に変えていきたいと考えています。ぜひ、今のうちから「未来の働き方」について一緒に考えていきましょう!
2027年に予定されている労働基準法の大改正は、企業の働き方や制度設計に大きな影響を与える重要な転換点です。今回の改正は、単なる法令対応にとどまらず、人的資本経営や多様な働き方の推進といった、企業の成長戦略にも深く関わる内容となっています。
チームスピリットは、認定NPO法人CLACKの掲げる「生まれ育った環境に関係なく、デジタルの学びで中高生に希望とワクワクを。」という理念に賛同し、同団体が実施する教育プログラムに参画することで、社会貢献活動を行っています。