

「T2D3」という言葉をご存じでしょうか?
T2D3とは、ARR(年間経常収益)を1年ごとに3倍(Triple)、3倍(Triple)、2倍(Double)、2倍(Double)、2倍(Double)に伸ばすという、SaaSスタートアップの理想的な成長曲線を表す言葉で、100社以上の事業グロース支援の実績を持つリブ・コンサルティングが開発したシミュレーションゲームのタイトルでもあります。
リブ・コンサルティングが提供するT2D3は、ARR100億円を目指して資金調達・市場選択・施策選択を行う中で、経営者が直面するさまざまな課題を疑似体験できる経営シミュレーションゲームです。
今回T2D3を活用した研修は、コーポレート統括本部のメンバーに加えて新卒社員4名に向けて、フロントで起きていることやどのようなロジックで会社が動いているのか?を認識し、俯瞰して会社・事業の理解を促進するために企画されました。
白熱した5時間にわたる研修の様子をお届けいたします!
資金調達と施策選択がカギを握る
ゲームは、役職や部署、年齢がバラけるように4、5名で構成された8チームで競いました。
ゲームでは初期設定として、SaaS提供を「セールステック」か「ドキュメント電子化」を選択し、3期目からスタートします。
そして、会社の特徴を「プロダクト志向」・「マーケティング志向」・「バランス重視」・「組織力重視」・「経営力重視」の5つから選択します。それによって手持ちの資金が決まります。
次に、資金調達の有無と規模(ARRに対して何%か)、施策を選択します。
施策は、マーケティング、セールス、プロダクト、経営、組織などのカテゴリから選択します。打てる施策の数はCxOの人数によって決まります。
まず、チーム内でどこの市場を狙うのか、どんな施策を打って100億円を目指すのか戦略を話し合います。
「まずはスモールビジネスで泥臭く攻めよう」「最初からエンタープライズ市場狙った方がよくないですか?」「5期目くらいからCM打って認知度一気に上げたいなあ」といった議論があちこちで聞こえてきます。
リアルな経営の壁“HARDTHINGS”がチームを襲う
戦略を話し合って、いよいよスタート!
制限時間内に資金調達の有無や施策を登録します。すると、1期ごとにARRなどの結果が一斉にダッシュボードに表示されます。
期を更新すると、実績の表示はもちろんですが、リアルな「HARDTHINGS」が発生します。
筆者が参加したチームでも、 CxOを1人獲得すると施策が2つ追加できるので、「早期にCxOを獲得して、打てる施策数を増やそう!」と意気込み、2,000万円をかけて採用に踏み切ったものの、まさかの採用失敗という手痛い目に…。
また、同時に「経営者が家族の都合で事業に集中できない」というHARDTHINGSが発生し、まだ5期目だというのにARRの成長率が急激に下がり、打てる施策も1つのみという事態に陥りました(笑)。(そしてその痛手を回復できぬまま、最下位に終わる…。)
他のチームからも「リードは取れているのに全然成約してないんだけど」、「カスタマーサクセスが炎上して解約率が28%になってる!」といった声が聞こえてきます。
「ここで高度人材を採用した方がよくないですか?」「全市場だったらタクシー広告で認知度上げたいですよね」などと、各チーム真剣に議論をしながら賑やかにシミュレーションゲームを進めました。
ゲーム中盤で、すでにこの成長率では10期で100億円は到底達成できないのでは、という焦りがよぎります。チームによっては長丁場による集中力の低下も見えてきました。(なぜか後半にM&Aをするチームが続出。)
激戦を制したチームはARR76億円を達成!中長期戦略の難しさを実感
10期を終え、1位は山岡さん率いるHチームがARR76億円を達成!
山岡さんに優勝コメントをいただきました。
「まず、最初の戦略検討の時にスモール・ミッドマーケットから攻めようとチームで決めて、段階的にエンタープライズマーケットに移行する戦略をとりました。その中で、エンタープライズマーケットに移行する施策を打つのはもちろんですが、チームメンバーの皆さんから人事体制やカスタマーサポートの重要性についての意見もあり、開発やマーケティング施策をしながらも、内部組織を強化する施策を一緒にやったことが良かったと思います。
ARR100億円を達成するためには、市場や自分たちの顧客層がどういったものなのか、解像度をもっと高めて、タイムリーな施策を打つ必要があるなと思いました。あと、やっぱり予期せぬHARDTHINGSを乗り越えられるかですね。」
講師をしてくださったリブ・コンサルティングの笹川さんからは、「全体的にレベルが高く、難しいゲームになったと思います。開発ベンダーらしく最初にプロダクト施策を打つチームが多く、チームスピリットさんらしさが出ていたと思います。」との講評をいただきました。
参加者からは、「目先の課題にばかり囚われてしまい、中長期の視点で施策を打てなかった」「最初の戦略で選択ミスをしてしまい、取り返すのに時間がかかった」といった声が聞かれました。
参加者の振り返り
・解像度の高い戦略なくして成長はない。想定以上のHARDTHINGSが起こることが当たり前ということを加味しながら戦略を遂行する必要がある。
・キャッシュフローが難しい。限られた資金や環境の中で、どのような施策を打てばいいか、結果どうなるのかを疑似体験できたのは良かった。
・「組織は戦略に従う」であり、非連続/持続的成長を実現する上で、それに耐えうる組織を比較的小規模な段階から固めておかないと、組織規模が拡大していく時に、戦略との不整合による歪みも大きく、その是正は非常に困難であると、改めて気づいた。
・組織づくりやプロダクト開発など、すぐにARRにつながらない投資が中長期的にみると重要であること、施策のフィードバックを行うこと、失敗を分析して次に生かすこと、など多くの学びと気づきがあった。
・戦略は、プロダクト・マーケティング・営業だけでなく、資金調達のほか、組織観点の施策も重要であるということ。また、単純に人が一定数いないと戦えない、という至極単純なことを体感した。
最後に、講師のリブ・コンサルティング笹川さんからコメントをいただきました。
チームスピリットの皆さんと「T2D3」研修をご一緒できたこと、大変光栄です。5時間にわたる白熱した議論と意思決定の連続は、まさに「経営のリアル」そのものでした。
今回の研修は、コーポレート統括本部の皆さんを中心に、フロントの動きや会社が動くロジックを深く認識し、事業全体を俯瞰的に理解することを目的としていました。皆さんが真剣に戦略を練り、予期せぬ「HARDTHINGS」に直面しながらも解決策を探る姿から、この目的が十二分に達成できたのではないかと思います。
ゲームを通じて資金調達から施策選択、トラブル対応までを疑似体験することで、あるべきコーポレート像を見つめ直すきっかけになり、業務における意思決定やチームでの協業に新たな視点や気づきをもたらすことを心より願っています。
今回のゲームを通じて、戦略立案から実行、そして予期せぬトラブル対応まで、まさに“経営のリアル”を体感することができました。
限られた時間の中で議論し、意思決定し、結果に一喜一憂する様子は、まさに実際のビジネスそのものだったと言えます。成功も失敗も含めて、多くの学びと気づきが得られた貴重な時間でした。この経験を、明日からの業務やチームづくりに少しでも活かしていきたいと思います!