
Executive interview 変化できるものだけが生き残る 後編
ファイナンスやIRの領域は専門性が高く、一般の社員にはどのような活動をしているのか実態が見えづらいもの。
皆さんは「法務部」と聞いて、どのような業務を思い浮かべるでしょうか?
会社間における契約書の作成や審査はもちろんのこと、コンプライアンス管理など多岐にわたる業務で私たちの会社、事業を守ってくれています。
今回は、知っているようで今さら聞けない法務部の業務や役割などをご紹介いたします。
2020年入社。コーポレート統括本部 経営管理本部 法務部 部長
― 法務の業務内容を教えてください
皆さんが法務の業務で思い浮かべるのは、契約書作成や契約書レビューではないかと思います。契約は、お客さま、パートナー、委託先など、さまざまな相手とさまざまな内容で締結します。
類型化できるものは、「契約書ひな形」として管理して全社に展開していますが、「契約書ひな形」からの逸脱事由があれば、担当部門と協議しつつ、会社のリスク管理上、許容できる形で契約書案・修正案を作ります。また、契約の業務には当社サービスを提供するための規約作成や、お客さまからの規約に対するご質問への回答も含まれます。
新プロダクトの発売時には、各製品の特性や運用を加味し、さらにプロダクトローンチのスピード感を損なわないよう、意識して規約を作成しています。
この他にも、コンプライアンスのため社内研修を企画・実行、社内規程の管理・変更を行っています。
All hands meeting(全社集会)での「知的財産権」「贈収賄」に関する社内研修や、社内規程については「ソーシャルメディアの利用方法」の改訂等を研修やお知らせで覚えていらっしゃる方もいるかもしれません。
さらには、内部統制のため、関係部門と協議しつつ、社内稟議等の設計や効率化も考えています。当社にあった運用というのはまだまだ模索していまして、使用感や動作の検証も含めて、チームスピリット製品の稟議機能を徹底的に使い倒したいと思っています。改善のアイデアがある方は、ぜひご一報いただけると嬉しいです。
法務の業務として珍しく思うものとしては、情報セキュリティ・プライバシー体制の運用や、お客さまからのセキュリティの問い合わせに対する回答の取りまとめがあります。
情報セキュリティ・プライバシー体制の運用のため、各部門がどのような業務をどのように実施しているかを理解した上で、各部門のリスクアセスメント(分析)やリスク低減施策を支援しています。カスタマーサクセス部門など、お客さま環境データを取り扱う全従業員・委託先・派遣に、半年ごとに受講いただいている「お客さま環境アクセス研修」もその一環です。
また、お客さまからのセキュリティの問い合わせを回答するためには、プロダクトやSalesforceの理解も必要になります。
入社した当初は、何を見ても聞いても分からないことだらけで、法務専門職として入社したはずなのに「どうして連日Salesforceの資料を読みこんでいるのか…」と思いましたが(笑)、障害やインシデント時に状況を把握しやすくなるための知識を得ることができたと思っています。
― 法務部で業務をするには、どのようなスキルが必要なのでしょうか
当たり前のことですが、法的知識は必要です。
ただ、どのような優秀な人員でも、あらゆる領域の法令や運用に精通するのは不可能です。ですので、高度な法律の知識が必須というよりは、学び続ける・情報をアップデートし続けるマインドセットが一番重要だと思います。
現在、チームスピリットは新しい試みを目覚ましいスピードで推し進めようとしているので、新しい試みの都度、関連する法令を高速でキャッチアップしていく必要があります。
法律的な知識だけではなく、事業の理解も重要です。
顧問として外部弁護士の先生にも助けていただいていますが、社内に法務部が設置されている意義として、法的見地から、事業にフィットした意思決定のための提案や情報提供をすることだと思っています。
そのためには、ビジネスサイドがやりたいことをヒアリングするスキルはとても重要ですし、法的リスクのみならず、中長期的な観点でリスクを指摘し、またはリスク対応策を検討するスキルも必要になります。会社としてのより良い意思決定を行うために法務部門が存在していますので、法務側の検討結果を分かりやすく伝えるスキルも必要です。ただ、このようなスキルは、どの部門の方でも必要なものとも言えますよね。
― 法務部の業務で大変なことはどのようなところでしょうか
会社全体を俯瞰しながら、縦横で事業を注視する必要があるところでしょうか。
例えば、経営方針を決定する取締役会の事務局として関与することもあれば、契約関連の調整のために個別の商談に同席することもあります。
また、他部門との連絡も特定の部門に関わりなく、まんべんなくあります。日夜、あらゆる部門から、Chatter※やSlackで法務部への問い合わせが本当にたくさん来るので(笑) 。
そういう意味では、法務に入ってくる情報は量も多く、また抽象的なものから具体的なものまで性質が異なるものが多いので、情報をうまく整理・連結させて日々業務をしていくのは大変だなと思います。
※Chatter…Salesforceが提供する企業向けの社内SNS。
― 会社全体の事業を詳細に理解するのはかなり大変そうですね
そうですね、大変ですが面白い部分でもあると思います。
チームスピリットの皆さんは、事業を進めることだけではなく、そのリスクもよく考慮しようと法務部の検討結果を尊重し、業務を進めてくださる方が多いので助かっています。
― 会社の「守り」をする部署として、気をつけている点や、チームづくりで意識されていることを教えてください
法令は改正される場合もありますし、事業の進展によって考慮しなければならない法令が増える場合もあります。そのため、勉強会を2週間に1度開催し、チーム全員の知識をアップデートするようにしています。
共通の課題図書を読んできて単元ごとに発表をするのですが、アウトプットすることによって自分の理解度を認識したり、聞いている人が理解できるような説明ができているかを確認したりしています。
チームづくりの面では、少数精鋭で日々の業務を対応しているので、属人化しないよう、定常化した業務は複数名が対応できるように業務を回しています。
マネージャーとして何かしたということはないのですが、法務内では相互に支えあう文化があるので、各メンバーが自分の業務を少しずつはみ出して、こぼれないように法務サービスを提供しています。
― 最後に、法務部の目標や意気込みなどがあれば教えてください
法務部として、会社にとって最適な意思決定ができる支援をしていきたいと思っています。法務部はビジネスの最後の意思決定をする部門ではないですが、法的なリスクだけでなく、潜在リスクや中長期的なリスク、それに伴う対応策についても提言や支援をしていきたいと思っています。
また、現在、会社全体の業務の効率化やユーザビリティ向上のため、会社の稟議や契約書レビューの依頼等、オペレーションのプロセスの改善にも取り組んでいます。
プロセス改善のためのアイデアや要望があれば、ぜひ法務部までいただきたいと思います。
有馬さん、ありがとうございました!
ファイナンスやIRの領域は専門性が高く、一般の社員にはどのような活動をしているのか実態が見えづらいもの。
活字離れが叫ばれて久しい昨今。映画や音楽すらもどんどん短い尺のものが好まれ、「タイパ」が重視されている現代ですが、読書には短期的な「タイパ」だけでは得られない、深い価値を持っています。
チームスピリットにはさまざまな部署があります。 今回は、すべてのお客さまに向けたサポートとその仕組みを担う、カスタマーサポートユニットについて、その業務内容や工夫を探っていきます。