「労務トランスフォーメーション」セミナーレポート
2024年7月30日に、チームスピリットをご利用していない企業さまや一部導入企業さまもお招きして、初のオフラインでのビジネスセミナーを開催いたしました。
LIFULLが「ワークログ」の活用ノウハウを活かし、労働生産性向上コンサルティングをスタートするプレスリリースが、 2024年8月29日に発表されました。
※ワークログ:チームスピリットで取得できる、利用者の出勤から退勤までの1日の活動ログ。ログを集計し分析することで生産性の改善やエンゲージメントの向上が実現できます。
2024年10月1日に実施された本セミナーでは、組織の意識改革や業務改革を検討している企業の方々にとって、変革のチャレンジを実践する企業の取り組み事例やトークライブから、オフラインでしか聞くことのできないリアルな情報に触れる機会を提供したい、と企画されました。
「ワークログ」を活用した人材育成の取り組みを通じて、労働生産性を向上させた株式会社LIFULLとともに、LIFULLの事例を紹介したセミナーの一部をご紹介いたします。
アジェンダ
第一部:専門家基調講演
「雇用マーケットの大激変と重要な法令政策、今後必須の実務と持つべき視野」
産学連携団体 一般社団法人iU組織研究機構 代表理事 松井勇策 氏
第二部:事例紹介
「ワークログを活用した労働生産性の高い人材育成と組織づくり」
株式会社LIFULL 日次採算性向上推進グループ 廣瀬智英 氏
第三部:パネルディスカッション
「経営と現場をつなぐ:LIFULLが挑んだ生産性改革のプロセス」
株式会社LIFULL 執行役員CFO グループ経営推進本部長 福澤秀一 氏
株式会社チームスピリット 執行役員CRO 営業統括本部担当 若宮成吾
懇親会
セミナー会場であるLIFULL本社内1階にある「LIFULL Table」にて軽食とドリンクをご用意
まず第一部では、社会保険労務士であり、雇用系シンクタンクの一般社団法人 情報経営イノベーション組織研究機構 (略称:iU組織研究機構)の代表理事である松井勇策氏より、重要な法令政策と取り組むべき実務についてお話がありました。
あらゆる業界で事業環境が早いスピードで変化しており、既存事業の陳腐化と、就業者が足りず業務が回らないといった問題が社会課題となっています。
それらの対応策自体は明確で、事業環境の変化に対してはジョブ型による仕事の定義やリスキリングによる事業変革といった人的資本経営であり、また、人材不足への対応策としては、業務の高付加価値化や新技術の導入、戦略的人材配置による人的資本経営だと説明しました。
人的資本経営とは本来、育成から働き方の検証まで含むもので、人的資本情報開示においても「現場の働き方の実態を踏まえた検証」と捉えられます。長期的な人的資本経営の政策の流れをみると、ここ数年はIR観点やグローバル雇用が強調されてきました。
今後の法令・政策はすべて働き方の改善と育成や風土改善の両立を目指すものになると予測されます。
雇用環境整備の根本は「働き方」「業務」の把握をし、「ワークログ」でやるべき仕事の優先順位を可視化することが重要だとし、「働き方の実態データ」を踏まえた上で、企業価値の創造が絶対に必要だと松井氏は強調しました。
第二部は、株式会社LIFULL グループ経営推進本部 経営戦略ユニット 日次採算性向上推進グループ 廣瀬智英氏から、6年前から取り組まれている「労働生産性をいかに向上させていくか」というテーマについて、具体的な事例を交えてお話いただきました。廣瀬氏は社内における労働生産性向上に向けた戦術立案および実行・制度設計・発信・社内コンサルティング等を担当されてきました。
LIFULLでは、経営理念の実現に向けた人的資本経営において6つの重点テーマを置き、その1つに「チームの成果の最大化」があります。この重要テーマの実現に向けたプロセスとして「ワークログ」活用を推進し、目標の早期達成によるキャリアアップや評価の向上、労働時間の減少によるプライベートの充実など、従業員のエンゲージメント向上を目的として取り組んできました。
課題となる労働生産性をどのように計測するかについて、LIFULLでは「成果」と「時間」の関係で計測しています。職種関係なく全組織がKGI(1年以内に達成させる最重要成果指標)にコミットし、個人ごとの時間を「全社員が」「日々記録し」「日々改善することができる」形で計測できるようにし、可視化することで感覚値ではなくデータで語れることが重要だとしました。
しかし、「記録はしました、ただ使えていません」という状況に直面します。そこで、記録したものを成果達成につながる時間か否かを分け、ワークログを「活用するところ」まで仕組み化し、誰もがすぐ活用できるようにしました。また、この仕組みを使う・教えることができるマネージャーの育成にも取り組みました。
社員の「管理される」という意識を払しょくするために、まずはトップダウンによるワークログの活用を「繰り返し言い続ける」ことで意識改革を行い、「改善してより良くなる」というポジティブな意識づけをしたのです。
また、同時にマネージャー研修の実施や、うまく活用している組織の事例を共有しディスカッションするなど、定着化に向けた施策を行いました。
そして大事なことは、「ワークログを活用している」ことによる評価接続による「やれば評価される」意欲の増進です。
マネージャーは、評価基準の1つとしてワークログの活用状態を反映させ(ワークログのみだけではなく総合的に判定)、社員個人評価については、ワークログの活用指標を反映させました。
■ワークログ活用の効果の詳細については、下記をご確認ください。
・導入事例記事
社内における意識づけや行動改革における「第三者からの指摘やアドバイス」の重要性から、LIFULLでのノウハウを労働生産性の向上に課題を抱える企業にぜひ活かしていただければ、と結びました。
第3部は、株式会社LIFULL 執行役員CFO グループ経営推進本部長 福澤秀一氏と株式会社チームスピリット 執行役員CRO 営業統括本部担当 若宮成吾がトークセッションを行いました。
LIFULLは2006年に上場し順調に成長していましたが、2010年頃に成長の踊り場を迎えます。そこには、社内モチベーションの維持などが課題にありました。組織拡大に伴う理念の浸透や社員の定着など、福澤氏が取り組んだ具体的な課題に、トークセッションは大いに盛り上がりました。
若宮: 企業が成長し、人が増えていくと評価の仕方も変わってくると思いますが、LIFULLではどのような評価制度の考え方をされているのでしょうか。
福澤氏: 私たちは、すべての職種を同じ目線で評価するようにしています。もちろん、スキルマップは職種ごとに作成していますし、一部マイナーチェンジはしています。
企業が安定期に入ってくると行動も安定してきてしまう。そうすると成長が止まります。一人ひとりが当事者意識、経営者意識を持って生産性向上に取り組まないと企業として成長できないので、ワークログで可視化し、分析をして改善していくことは非常に大事だったわけです。
若宮: 組織の階層が深くなるとワークフローのプロセスが増えたりして、どの部分に何が無駄な業務なのかが分からなくなりそうですね。
福澤氏: 仮説として無駄があるのだと思っていても、そこで可視化しないとお互いに認識できないですからね。
若宮: 先ほど廣瀬さんからのお話にもトップダウンでワークログの活用について「繰り返し言い続ける」とのお話がありましたが、現実的にいきなりトップダウンで可視化するのはなかなか難しいことだと思います。どのようなステップを踏まれたのでしょうか?
福澤氏: 社長が言い続けることもそうなんですが、最初のころは社員の半分からスタートしました。取り組んでいる人、取り組んでいない人も可視化して、草の根で啓蒙活動をしていきました。
導入して安定運用するには半年以上かかったと思います。1人1人が経営者にならないといけないので、グループ長がワークログをまずは活用して取り組むようにしていきましたね。
若宮: ワークログは結果的にどういった効果はあったのでしょうか。
福澤氏: 自分たちの部署は何が最重要なのか、そこに対してどれだけリソースを割くのか。リソースは限られているので、KGI達成のために誰に、どの業務に、どのくらいポイントを絞って時間を使うのかを考えて活動していくことは非常に意味があることです。意味をしっかり伝え続けて、今後も継続していくつもりです。
当初予定していた時間はあっという間に過ぎ、まだまだ深ぼりしたいテーマはいくつもありましたが、続きは懇親会へと持ち越しました。
懇親会は、LIFULL本社内1階にある「LIFULL Table」にて軽食とドリンクをご用意して行われました。
ご登壇いただいた松井氏、福澤氏、若宮へ、多くの参加者が質問をしていました。
また、参加者同士も共通の課題で盛り上がり、活発な交流が行われました。
・LIFULLさんの事例は大変参考になりました。職種で成果(KPI/KGI)の考え方が違う、コアorノンコア、通常or繁忙期(納期前)等々、さまざまなパラメータがありますね。
・人的資本経営という概念自体が希薄なまま、経営に参画してきてしまったので、非常に刺激を受けました。
・まさにこのセミナーの前にチームスピリットの営業担当の方と工数管理について話をしておりましたので、改めて工数管理について考える機会となりました。
弊社にとって、まだまだ工数管理についてのハードルは高く、管理されると捉えられてしまいかねず、モチベーション低下になりそうな気配を感じておりました。今回のセミナーでワークログの活用が評価につながることを公言することで、懸念解消の糸口になる可能性を感じました。
本セミナーを企画・運営した営業企画室の福川原さんにセミナーを終えた感想をお伺いしました。
今回のセミナーはLIFULLさまと共催かつ懇親会も開催するという、初めての試みでした。準備期間が短かったため集客に不安もありましたが、予想を超える多くのお客さまにご参加いただき、大変感謝しております。
特に、現在当社が提案中の企業さまにも多数ご参加いただき、リアルな場での交流を通じて、お客さまとの関係構築に大きく寄与できたと感じています。
多くの企業さまに、労務費の管理だけでなく労働生産性の向上という観点からも工数管理を活用していただきたいと考えていますので、今回のセミナーで活用方法を広く認知していただくことができたのは、非常に貴重な機会となりました。
これで終わりではなく、今後もLIFULLさまと定期的に共催セミナーを開催していく予定です。次回以降はさらに規模を拡大し、より多くのお客様にご参加いただけるよう努めてまいります。